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ヒトは情報を仲間に伝え、またそれを記憶あるいは記録して、個体の生命や遺伝を超えて蓄積され,また広い範囲に流布します。これは言葉により可能になりました。ヒトの肉体的行動でも知的思考でも、脳では符号化された情報になって処理される,と云います。私達は埼玉大学で「人に倣ったソフトウエア自動設計」を研究しました。設計等のヒトの意図的行動は、自然言語で表した最上位の概念から繰返し階層展開され、最末端で充分に詳細化された概念はプログラム言語のソースコードに移行する、あるいは筋肉を制御する神経の指令になって肉体的な行動が実現します。

この知識は「親概念⇔子概念群」の形で蓄積されます。「人間知能」の中核は動物的な行動学習から始り,自然言語での幼児の会話,学校教育を経て専門領域に進む.これで辞書的な知識群と階層展開網の相互リンク群でと形成されるのでしょう.

この視点から見ると、下の両者、

・プログラムを設計する’process’  ・ハードウエア製造作業の「工程」

の知的構造は同じで、諸活動の工数等の外部特性は両者共に同特性を示します。

ハードウエア製造の管理は19世紀末から、科学的管理を標榜して作業時間中心の定量的な研究と応用の技術が進みました。20世紀前半の品質管理を含め、Industrial Engineering, IE, 経営工学の体系ができました.他国と異なり日本では,第二次大戦後に全産業がこれを学び普及しました。ソフトウエア作業でも、この技術が利用できます。1960年代半ばから出発した日本の「ソフトウエア工場」はその例です。

ソフトウエアの場合とハードウエアの場合とでは、次の差異があります。

・ハード製造作業はN回の繰返しで、習熟が早く、技術/作業の集積が大きい

・ソフト開発では各種の設計を繰返す。習熟が遅く、技術/作業の集積が小

従って製造作業向けに進歩したIEはソフトの場合には、各人が技術を蓄積する〜習熟できる労働環境を含めて,ソフトに適合させる各手段を取る必要があります。

IE, 経営工学は、初めから科学的を標榜したから定量的で,徹底的に合理的な生産管理の体系です。これには日本のTotal Quality Management, TQMの技術も含まれます。各製造企業はIETQMについて教科書から基本を学び、各職場で試行し、自組織毎の適用を進めました。ソフトウエアの場合も同様です。お手本を真似るのではなく、自らの実態を定量的に計り、顧みて原因を探り、自分で向上策を工夫して,皆に徹底させます。改善は自ら行なうもので真似では駄目です。「知の蓄積」と「知を拓くに慣れた人々」の両輪が日本のハード産業を世界に押出しました.次世代は知の時代と云われます.そんな先の話ではありません.我々は既にその知の時代に居るのです.

次は日本のソフト産業が世界に進出する番です。工学は社会/組織そして個人に,より大きな豊かさと快適さを実現する使命があります.このプロジェクトはシステム,ソフトについてプロセスを中心とする技術の確立と普及の為の集いです.私達はこの道に皆さんより,ホンの少しばかり先に,入りました。

ご一緒に、この新しい路を拓きませんか?

現在の最近の発表に続けて,埼玉大学でのSoftware Creation Project’,これに先立つソフト開発プロセスの諸特性,組込み系の設計等の発表を公開します.並行して,この技術を使う手引きを出す計画です.皆様の忌憚無いご意見/質問を歓迎します.

2007年 3

代表 河野 善彌